肩こりは、首や肩の筋肉に過度な負担がかかることで引き起こされることが多く、不適切な枕の使用が原因となることもあります。また肩こりで済めばまだいいですが頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性脊髄症、頚椎症性神経根症、後縦靱帯骨化症・黄色靱帯骨化症、胸郭出口症候群などのさまざま疾患を増悪する可能性もあります。
適切な枕を選ぶことで、睡眠時の姿勢を整え、首や肩への負担を軽減できます。以下に、肩こりを軽減するための枕選びのポイントを詳しく解説します。


高さの調整ができる枕を選ぶ
枕の高さは、首や肩にかかる負担を大きく左右します。一般的に、適切な高さは仰向けで寝たときに首が自然なカーブを保てる高さであり、横向きで寝たときに首と背骨が一直線になる高さです。首と背骨が一直線になるのは解剖学的にも安定します。
- 枕が高すぎる場合 → 頭が前方に押し出され、首に過剰な負担がかかる。僧帽筋などの肩上部の筋肉が引き延ばされる。
- 枕が低すぎる場合 → 頭が後ろに倒れ、頸椎の椎間関節などにストレスがかかる。
個々の体格や寝姿勢によって適切な高さは異なるため、高さ調整が可能な枕を選ぶのがおすすめです。しかし持っている頸椎周辺の疾患によっては枕が高すぎたり、低すぎることによって症状が強くなってしまうことがあるので注意が必要です。
素材の選び方

枕の素材によって、首や肩へのフィット感やサポート力が異なります。肩こりの人におすすめの素材は以下の通りです。
- 低反発ウレタンフォーム
メリット:頭の形にフィットしやすく、圧力を均等に分散する。
デメリット:通気性が悪く、夏場は暑く感じることがある。 - 高反発ラテックス
メリット:適度な弾力があり、寝返りがしやすい。
デメリット:ゴムアレルギーがある人には向かない。 - そば殻・パイプ枕
メリット:通気性が良く、硬さの調整がしやすい。
デメリット:音が気になる場合がある。 - 羽毛・ポリエステル綿
メリット:柔らかく、ふんわりとした感触。
デメリット:へたりやすく、サポート力が不足することがある。
首や肩への負担を減らすには、適度な弾力がある素材(低反発ウレタンやラテックス)が適している ことが多いですが、個々の好みや寝姿勢に合わせて選ぶことが重要です。
自分の寝姿勢に合った形状を選ぶ
枕の形状も肩こりに大きく関係します。自分の寝姿勢に合った形状を選ぶことが重要です。
・仰向け寝が多い人 → 首のカーブを支える「頸椎サポート付きの枕」
・横向き寝が多い人 → 頭と肩の隙間を埋める「やや高めの枕」
・うつ伏せ寝が多い人 → 首への負担が大きいため、「極端に低い枕」や「枕なし」を検討
特に 「頸椎サポート付きの枕」や「波型の枕」 は、首の自然なカーブを保ちやすく、肩こり改善に有効とされています。
通気性と耐久性
枕の通気性が悪いと、蒸れや寝汗が増え、寝つきが悪くなったり、首周りの不快感につながることがあります。
また、枕は長期間使用するとへたってしまい、サポート力が低下します。適切な頻度で枕を交換することも大切です(目安として2~3年ごとの交換 が推奨されます)。


試し寝ができるものを選ぶ
枕は実際に使用してみないと、自分に合うかどうかわかりません。そのため、試し寝ができる店舗で購入する か、返品・交換保証のあるものを選ぶ と安心です。
肩こりが特にひどい場合はオーダーメイド枕も検討
長年の肩こりに悩んでいる場合や、なかなか合う枕が見つからない場合は、オーダーメイド枕 も選択肢の一つです。専門店では、首のカーブや寝姿勢に合わせた枕を作成してくれるため、よりフィットした枕を手に入れることができます。
まとめ
肩こりを軽減するための枕選びのポイントは以下の通りです。
1高さの調整ができるもの を選ぶ。
2低反発ウレタンやラテックスなど、適度な弾力のある素材 を選ぶ。
3自分の寝姿勢に合った形状 を選ぶ。
4通気性が良く、耐久性のある素材 を選ぶ。
5試し寝ができる枕や返品保証付きの枕を選ぶ。
6オーダーメイド枕を検討するのも一案。
肩こりの原因は枕だけでなく、寝具全体のバランスや日中の姿勢、ストレスなども関係 するため、枕と合わせて生活習慣の見直しも重要です。
参考文献
中村裕子. 肩こりの原因と枕の関係性について. 日本整形外科学会誌2020.
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この記事は、医療法人社団 百年会の理事長、田部田 英之が監修しています。
【経歴】
2002年 慶応義塾大学医学部卒業
2003年 順天堂大学ペインクリニック入局
2006年 保谷厚生病院麻酔科長就任
2009年 BIGTREE.練馬クリニック院長就任