骨粗鬆症は、私たちが何気なく生活している中で気がつかないうちにどんどん進行していきます。痛みなどの症状がないため、日々の生活で意識する機会がないかもしれませんが、ちょっとした転倒で骨折しやすくなってしまいます。高齢化社会が進む現代日本において、非常に重大な問題です。
骨粗鬆症とは
骨の強さは骨密度と骨質(こっしつ)によって決まります。骨密度が低下し、骨の強度が低下した状態を骨粗鬆症と呼びます。骨密度は20代がピークでそこからは緩やかな減少を続けていきます。特に女性に関しては閉経を機にガクッと落ちていきます。
自治体などが骨検診を行っていますが、日本では受診率が極端に低く、なおかつ症状が乏しいため、骨折をして病院を受診し始めて気が付くといったことが多いです。
腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折といった骨折が多いのですが、手術が必要な場合もあるので大変な負担となってしまいます。とにかく早期発見し、骨粗鬆症の治療を始めることがとても大切です。
骨粗鬆症の診断・検査
まず始めに問診にて、普段の食事や運動などの生活習慣やこれまで骨折したことがあるかどうか、女性であれば閉経時期などを確認し、背骨の変形の状態や背中の痛みの状況などを診察します。
さらに、骨密度を測定したり、血液検査をおこないます。
骨密度検査
DXA(デキサ)法
DXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry )法とは、2種類の微量なX線を照射して全身の骨密度を測定する方法です。骨折しやすい腰椎や大腿骨頸部の測定が出来るので、正確な診断が可能となります。※前腕部のみを測定する装置もあります
また、薬による治療効果の評価にも適しています。
MD(エムディ)法
MD法(Microdensitometry法)とは、X線で手の骨密度を測定する方法で、簡便に測定することが可能です。DXA法と異なり、薬による治療効果の判定は難しいです。
定量的超音波法
踵や脛(すね)の骨に超音波を当てて、骨密度を測定する方法です。主に骨粗鬆症の検診に用いられています。
血液・尿検査
骨代謝マーカーといった数値を測ることで、骨の新陳代謝の速度がわかります。
骨吸収を示す骨代謝マーカーが高い方は、骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値に関わらず骨折の可能性が高い状態であると言えます。
治療方法
骨粗鬆症の治療は大きくわけて内服治療と注射による治療に分かれます。注射の治療も月1回のものから半年に1回、一年に1回などバリエーションに富んでいます。
患者様のライフスタイルや骨粗鬆症の重症度を合わせて治療を検討することができます。
薬物療法
現在、骨粗鬆症の治療薬が増えたことにより選択肢も増えました。しかし、途中でやめてしまうと十分な効果が得られないため、進行度合いや患者様の生活スタイルに合わせて治療薬を選択をする必要があります。治療薬は3種類に大きく分類されます。
- 骨の吸収を抑える薬
- 骨の形成を助ける薬
- カルシウムの吸収を改善する
プラリア皮下注射
6ヵ月に1度、医療機関でおこなう皮下注射です。抗RANKL抗体製剤と呼ばれ、破骨細胞(骨の新陳代謝にておいて、古い骨の吸収をおこなう)の形成などを促進するRANKLリガンド(RANKL)を阻害し、骨の吸収を抑制します。
テリボン皮下注射
1週間に1度、医療機関でおこなう皮下注射です。副甲状腺ホルモン(PTH)製剤と呼ばれ、骨芽細胞(骨を形成する細胞)の働きを活性化し、骨の新陳代謝において骨の形成を促進します。骨折の危険性が高い患者様に適しています。
テリボン皮下注オートインジェクター
1日1回、週に2回、3日〜4日間隔で患者様ご自身でおこなう皮下注射です。
食事療法
骨の健康にはカルシウムの他に様々な栄養素が必要となります。
- ビタミンD:腸官でのカルシウムの吸収を促進する
- ビタミンK:骨へのカルシウムの取り込みを助けます など
他にも骨密度を上げるには運動や日光にあたることなども必要といわれます。