肩の痛みを感じると「肩の痛み=四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」と思われる方がほとんどではないでしょうか?「四十肩・五十肩は年を取ればなるものだから」と原因を明らかにせず、そのまま放置してしまってはいけません。肩の疾患は、四十肩・五十肩の他にも、腱板断裂や変形性肩関節症などさまざまありますので、違和感を感じたら診察を受けましょう。
腱板断裂とは
肩関節は4つのインナーマッスル(肩甲挙筋、棘上筋、棘下筋、小円筋)によって安定しています。
それら4つの筋肉は、体の中心の方から肩関節に向かい、最終的には腱となり、並んで1つの曲面のようになり上腕骨に付着しています。ここを腱板(けんばん)とよびます。
腱板断裂は、それらがどこかで損傷を受けることで発生します。外傷(上にあるものを取ろうとしたなど小さいものも含める)や加齢性のものが原因と考えられています。40歳前後から腱の老化が始まり、50〜60歳前後が発症のピークとなります。
症状としては、まず肩の痛み、夜間痛が生じます。四十肩や五十肩(肩関節周囲炎)と似たような症状であるため、様子を見てしまう方が多いですが、肩関節周囲炎は拘縮(硬くなって動きが悪くなる)が問題となるのに対して、腱板断裂は筋力低下(腕が上がりにくい)が起こります。また、肩を挙げた際に痛みに加えて、ゴリゴリと音が鳴ることがあります。
腱板断裂の診断・検査
まず始めに問診・診察にて、肩が上がるかどうか、肩を上げた際のゴリゴリといった軋轢音(あつれきおん)の有無、拘縮の有無などを調べます。
また、レントゲン検査(単純X線検査)やMRIなどの画像診断をおこない診断します。
レントゲン検査(単純X線検査)
レントゲン画像に腱板は写りませんが、骨の変形や関節のすき間が正常時と比べて狭くなっているかどうかを確認することができます。
MRI検査
MRI検査は磁気と電波を利用した装置で、腱などの軟部組織の撮影が可能であるため、腱板断裂の有無、大きさを確認することができます。
治療方法
保存的治療と手術的治療があります。基本的には保存的治療が優先です。内服薬やブロック注射を併用しながらリハビリテーションにて筋力の回復をねらいます。
薬物療法
痛み止めの飲み薬、塗り薬や貼り薬などの外用薬を処方します。飲み薬はロキソニンなどのNSAIDs(エヌセイズ)と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬が使用されます。
神経ブロック注射
患部に局所麻酔薬を注入することで、症状を遮断(ブロック)し、痛みを緩和します。
ヒアルロン酸注射
ヒアルロン酸は関節内に存在し、関節の動きをスムーズにするといった潤滑油のような役割を持っています。そのため、直接ヒアルロン酸を注射することで痛みの軽減が期待されます。
理学療法
理学療法は痛みをとるだけではなく、痛みに伴う症状をやわらげ、症状の出にくい身体を作ります。
保存的治療を継続的に行っていても改善しない場合、手術療法を検討しています。ただ手術にはリスクも伴いますので、患者さんのお話をよく聞き、生活レベルに合わせて治療方法を一緒に考えます。